・身体障害 423.0万人
・精神障害 603.0万人
・知的障害 126.8万人
これは、内閣府(令和7年版「障害者白書」)のデータです。
一人で複数に該当する方、調査に含まれない方もいるので、一概に言えませんが、ざっくり計算すると、日本では親の10人に1人が、精神障害・知的障害をお持ちの子の問題を抱えていると考えられます。
そう考えると、とても身近で大切なテーマであることが分かりますよね。
本ブログでは、精神障害のなかで「知的障害」にスポットをあて、障害年金を請求するポイントとなる、認定基準、等級、金額、年齢について解説します。

尾崎 彰信(特定社会保険労務士)
私は、社労士として障害年金の請求代理を中心に、必要な方に必要な支援を届けるために取り組んでいます。
『障害ねんきんナビ®』パートナー社労士として北陸3県を担当しています。
※社労士(社会保険労務士)は、障害年金請求手続を代理することが許される国家資格です。

3分で分かる! 知的障害による障害年金の認定基準
障害年金には、「障害認定基準」が定められています。
この中で、「精神の障害」は5つに大別されており、その一つが「知的障害」です。
(参考リンク:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」)
◆障害年金における「知的障害」の定義と等級
「認定基準」の中に「認定要領」があり、障害年金の制度における「知的障害」を、次の3要素で定義しています。
①18歳ごろまでに知的機能の障害がみられる
②日常生活で持続的に支障がある
③何らかの援助が必要な状態である
具体的には、次のような状態が、障害等級に当てはまるとされます。
| 日常生活 | 食事や身の回りのこと | 会話の意思疎通 | 労働 | |
| 1級 | 常時援助が必要 | 全面的な援助が必要 | 不可能か著しく困難 | – |
| 2級 | 援助が必要 | 援助が必要 | 簡単なものに限られる | – |
| 3級 | – | – | – | 著しい制限を受ける |
※「-」で特に記載がない項目は、問われないわけではありません。
◆障害の程度で重視されるのは、「IQ」ではなく実際の「日常生活」
もしかしたら、「IQ(知能指数)は障害年金の認定基準にないの?」と不思議に思う方もおられるかもしれませんね。
一般に「IQ」は知能を計る数値として知られますが、実は、検査方法や体調によっても結果は変わり、知的障害の有無や程度を判定する決定的な基準にはならないのです。
障害年金の認定要領にも、ハッキリ、「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」と書かれています。
従って、「IQが高めだと、障害年金はもらえない」と諦める必要は全くありません。
具体的には、単身生活か家族同居か、日常生活での援助はどのくらい必要か、著しい不適応行動があるか、在宅で家族や訪問介護から常時援助を受けているか、就学・就労中の社会的な適応状況など、実態が重視されます。
◆日常生活能力では、就労の状況も考慮される
特に、日常生活能力の判定については、「社会的な適応性の程度によって判断するよう努める」と明記されています。
そのうえで、平成23年に新たに追加された「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、…仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断する」との規定がおかれています。
具体的には、一般雇用か障害者雇用か、就労施設に入所しているか、入所の場合は常時援助を受けているか、仕事の内容が単純・反復的か、周囲のサポートを受ける環境か、職場で同僚や上司とコミュニケーションが取れているかなど、実態が重視されます。
知的障害による障害年金の特徴(年齢、等級、金額)
障害年金における「知的障害」は、発達段階(おおむね18歳まで)にみられ、その大半が、特別な原因のない、先天的な知的障害といわれています。
(出生後の病気や事故などを原因とする、後天的なものも一部あります。)
◆知的障害は「二十歳前傷病」の障害基礎年金が支給される
知的障害では、発達段階(つまり「二十歳前」)の傷病という点で、「二十歳前傷病」による障害基礎年金が支給されることになります。
「二十歳前傷病」ということから、障害年金の原則とは少し違う、特別のルールがあります。
それが、次の4点です。
①「出生日」を初診日とみなす
②「二十歳到達時」を障害認定日とみなす
③保険料納付要件は問わない
④所得制限がある
◆等級は、1級と2級のみ(3級は不支給!)
発達段階(おおむね18歳まで)に発症するわけですので、障害基礎年金だけが対象になります。
そうなると、障害等級の3級(厚生年金のみ)は、「二十歳前傷病」の知的障害では、必然的に「級外」となります。
つまり、2級以上の障害等級に当てはまらない限り、障害年金は受け取れません。
3級は「級外」であり、実質的な不支給です。
◆年金額は、1級が約100万円、2級が約80万円
支給額は、障害基礎年金は、傷病の種類にかかわらず、等級ごとに定額です。
2級の約80万円が基本の金額(老齢年金の満額)であり、1級はその1.25倍である約100万円です。
(厚生年金は、報酬比例額が上乗せされますが、「二十歳前傷病」では対象外)
ちなみに、この年金支給額は、毎年、物価や給与水準の変動をふまえて改定されています。
令和8年度は、前年度に続くプラス改定が決まっています。
最重要! 「日常生活への影響」を具体的に伝える書類の作成
障害年金の認定は、介護保険の認定のような、請求者と実際に会って実態を把握する手続とは異なり、100%書類審査。
従って、審査で重視される「日常生活への影響」を、できるだけ具体的に、客観的な事実を分かりやすく整理した書類の作成が必須です!
その書類とは、「診断書」と、「病歴・就労状況等申立書」です。
◆診断書に盛り込みたい情報をメモにして医師にお渡しするのがおススメ
現在、「診断書(精神の障害用)様式第120-4」(右画像)には、「日常生活能力の判定」、「日常生活の程度」、「現症時の就労状況」など、はたして、どれくらいの主治医が普段の診察だけで実態を把握できているのだろうか?と思わずにいられないような項目がビッシリ並んでいます。
当時の厚労省専門家会議でも、診断書にこうした欄を追加し、医師に記載を求めることについて、現場の医師から「就労状況(収入・具体的な業務内容)まで医師が聞き取って書くべきなのか」など異論もあったようです。
(参考リンク:厚生労働省 障害年金の認定(知的障害等)に関する専門家会合)
いずれにせよ、具体的な情報を診断書にスムーズに盛り込んでいただけるよう、請求者やご家族は、できるだけメモを作成し主治医にお渡しすることをお勧めしています。
一例として、次のような論点があります。
| 症状の経過や程度 | 療育手帳の有無、判定区分、幼少期・就学期の知的能力の裏付けなど |
| 身辺の自立 | 服薬管理、清潔保持、身の回りの世話を家族が常時援助している状況など |
| 対人関係 | 公共の場や職場などで意思疎通できず、トラブルや孤立などの具体的事実など |
| 金銭の管理能力 | 金銭を与えると短期間で使い切る、消費者金融の利用歴があるなど |
| 危機回避能力 | 生活上の危険行動、職場での事故に対応できずパニック等の具体的事例など |
| 就学・就労の実態 | 就労支援事業所の利用、スタッフの常時支援を受けた単純作業など |
こうした「実態」の評価と障害等級の目安については、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が別に定められています。
(参考リンク:日本年金機構 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)
◆「病歴・就労状況等申立書」に必要なことを過不足なく書く
「病歴・就労状況等申立書」は、請求者やご家族の主張を書くことができる唯一の書類といってもよいでしょう。
それだけに、当事者は思いの丈を精一杯盛り込みたくなるものです。
しかし、いちばん大切なのは、「必要なことを、過不足なく」書くこと。
そのためには、何を書くかと同時に、何を書かないかも重要です。
知的障害による障害年金は、出生日を初診日とみなすため、出生から現在までを時系列に整理して記載しなくてはなりません。
特に、20歳現症での診断書が入手できない場合、この申立書に、二十歳前傷病であることをしっかり主張します。
相当な情報量がある中から、障害年金の請求に有用な論点(上表を参照)をピックアップして盛り込みます。
【よくある質問】知的障害で障害年金の請求は難しい?
「知的障害」も、障害年金を請求するための基本の手順は変わりませんが、「難しい」というイメージがあるのかもしれません。
よく質問される点がありますので、事前に理解しておくことをお勧めします。
①大人になってから(20歳を過ぎてしまっても)障害年金を請求できるの?
この「二十歳前傷病」による障害基礎年金は、二十歳前でなければ請求できないか心配になりますよね?
結論からいうと、20歳を過ぎてしまっていても、65歳に達するまでは請求できます。
ただし、二十歳到達時の現症による診断書の提出が必要です。
それがあれば、原則どおり「障害認定日」に遡って受給権が発生し、最大5年分が支給されます。
この診断書がない場合、代わりの資料で「二十歳前傷病」を証明できればよいのですが、それができないと「事後重症」の扱い(遡及できない)となってしまうので注意して下さい。
②「軽度の知的障害」でも障害年金を請求できるの?
一般に、知的障害は「軽度」「中度」「重度」といった区別がされることがありますよね。
しかし、実は、障害年金の認定基準にこれらの区別はありません。
先に解説したとおり、あくまでも、日常生活や就労状況の実態がより重視されるからです。
たとえ「軽度」でも、実態しだいでは、障害年金を請求できます。
③知的障害の障害年金は「永久認定」されないの?
もともと、精神障害による障害年金は、大半が永久認定ではないのです。
例えば、「うつ病」や「双極性障害」など中長期的に波があるケースや、「パニック障害」から「うつ病」へ病気自体が変化していくケースなど、流動的だからですね。
実際、日本年金機構が公表している「令和6年度 更新期間別支給件数」でも、新規裁定の全体に占める永久固定は、わずか8.5%しかありません。
(参考リンク:日本年金機構 令和6年度障害年金業務統計)
このことは、逆にいえば、医学的に「固定」と診断されれば、永久認定もあり得ます。
主治医による診断で、知的障害の程度が長期にわたり変動していないケースでは、症状固定とみなされ得るといえるでしょう。
ちなみに、障害年金が支給決定されると、しばらくして「年金証書」(右画像)が届きます。
この証書には、獲得した受給権についての大切な情報が記載されており、その一つが「次回診断書提出年月」です。
この欄に「**年**月」と印字されていれば、次回診断書の提出は不要、つまり永久認定を意味します。
④知的障害による障害年金の請求は何歳ごろから準備したらいいの?
時々あるのが、知的障害だけであれば、家庭内の日常生活は家族の支援でなんとかなるので、普段は通院していなかったようなケース。
いざ、20歳時点での診断書が必要になっても、通院を始めたばかりの病院では、医師に診断書の作成を断られることもあります。
結論としては、19歳になったら、精神科のかかりつけ医をもつこと!
定期的な診察の中で、日常生活や就学・就労の状況などについて、主治医としっかりコミュニケーションをとっておくことが大切、とお答えしています。
そのうえで、二十歳前の半年~3ヶ月前くらいに、障害年金の請求書類について準備を始めれば、大丈夫です。
⑤知的障害で障害年金を請求するのは難しいの?
結論からいうと、初めから「難しい」と身構える必要はありません。
本ブログで解説しているポイントをちゃんと押さえて、事前にしっかり準備をすれば大丈夫。
不安があれば、お気軽にご相談ください。
特別支援学校むけに、障害年金の学習会を無料でお受けしています
昨年12月、私がパートナー社労士として北陸三県を担当する「障害ねんきんナビ®」として、石川県内の特別支援学校でPTA・教職員むけの障害年金の学習会をさせていただきました。
引き続き、無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
まとめ | 知的障害で障害年金の請求をお忘れなく!
ここまで、知的障害による障害年金を請求するためのポイントを解説してきました。
知的障害で特別支援学校に通学中の場合、学校を卒業してから二十歳までに、しばらく間があります。
余裕があるようで、実際は、横のつながりがなく、まとまった情報を得られず、忙しさの中で、ついうっかり子が二十歳を過ぎていた、ということにもなりかねません。
もし、詳しい話を聞きたいと思われたら、専門家である社労士に相談してみるのもおススメです。
お気軽に無料相談をご利用ください。
本ブログが、二十歳前傷病による障害基礎年金の請求のタイミングを逃すことなく、確実な請求にお役に立てばうれしいです!





