障害年金の請求手続きでいちばん重要な書類は、なんといっても「診断書」です。
この「診断書」、しばしば訂正・書き直しが必要になることがあるのはご存じでしたか?
本ブログでは、請求手続きで二度手間や予期せぬ結果にならないよう、障害年金用の診断書を準備する際のポイントを解説します!

尾崎 彰信(特定社会保険労務士)
私は、社労士として障害年金の請求代理を中心に、必要な方に必要な支援を届けるために取り組んでいます。
『障害ねんきんナビ®』パートナー社労士として北陸3県を担当しています。
※社労士(社会保険労務士)は、障害年金請求手続を代理することが許される国家資格です。

●障害年金の診断書の訂正・書き直しを医師に依頼する際の注意点や料金
障害年金の請求をするときに、「診断書」は最重要といってよい書類です。
依頼した診断書が出来上がってきたら、必ず内容をチェックして下さい!
厳重に封がされていても、当事者が開封するのは全く問題ありません。
(仮に未開封の状態で提出しても、年金事務所の窓口で開封されます。)
しばしば、障害年金の診断書で、訂正や書き直しが必要になる場合がありますが、それは次のようなケースです。
ケース①:請求手続き上の事実関係が間違っている ⇒例えば、日付(初診日、現症日など)の誤りなど
ケース②:診断内容に明らかなミスがある ⇒例えば、身体の障害状態を図示するマーク漏れなど
ケース③:障害状態の記載に過不足がある ⇒例えば、日常生活状況や就労状況についての記載が不足しているなど
ケース④:障害状態の診断内容に納得がいかない ⇒例えば、実際の障害状態より軽く評価されていると感じる場合など
ここからは、具体的に、障害年金の診断書の訂正・書き直しを医師に依頼する際の注意点や料金について、具体的に解説していきますね。
◆注意点①:訂正・書き直しをお願いする医師に対する感謝と敬意を
皆さんは、診断書の実物をご覧になったことはありますか?
障害年金用診断書は、A3サイズ両面(片面の場合もある)にびっしり記載する様式で、傷病や病態によって8種類あります。
右は、様式第120号の3(肢体の障害用)の表面です。
裏面もびっしりと記載する欄があります。
他の様式も同様で、いずれも、障害認定に必要な情報を各項番から詳細に読み取れる様式になっています。
この1枚の診断書を作成するのに、相当な時間がかかることは容易に想像できます。
医師は多忙ですし、診断書を作成する時間を診察にあてることを考えたら、文書料では割に合わないというのが実情でしょう。
それでも、患者の利益を優先し主治医として協力を惜しまない医師がほとんどです。
その姿勢に、まずは感謝と敬意を持ちましょう。
◆注意点②:診断書の何が問題なのかを明確に伝える
診断書の訂正・書き直しが必要になるケースは、上記のとおり、明らかなミスがある場合(ケース①、②)と、認識不足や評価の違いに起因する場合(ケース③、④)とに大きく分かれます。
診断書の訂正も、医師(または歯科医師)以外はできませんので、まずは、作成された診断書の問題点を、明確に医師に伝えましょう。
明らかなミスについては、医師が確認したうえで、その場で訂正に応じてくれることがほとんどです。
◆注意点③:家族や本人の意向として訂正・書き直しを依頼したいことを伝える
他方、認識不足や評価の違いに起因する場合は、それほど簡単ではありません。
例えば、精神障害では、診断書の中に日常生活状況と就労状況について記載する項目があり、障害等級の判定に重要な要素となります。
しかし、月1~2回しかも数分間の診察で、患者が日常生活や職場で何に困っているか、また家族や上司・同僚から受けている援助の具体的な内容までを、医師が細かく把握できているかというと、かなり難しいでしょう。
主治医も、診断書の作成にあたり、情報量が少なくて困っていた可能性もあります。
そこで、障害をお持ちのご本人またはご家族の意向として、診断書の何が問題で、どのように訂正・書き直ししてほしいのかを、理由とともに、お手紙にして主治医にお渡しすることも工夫の一つです。
◆診断書の訂正には通常は料金がかからない
診断書を依頼すると、文書料が掛かります。
金額は、多くは1万円前後と思われますが、中には3,000円台から2万円近い場合もありました。
これは、病院が決めているので、実際にはかなり幅があります。
しかし、作成された診断書の訂正には、通常、料金は掛かったことはありません。
ただし、まったく新しく書き直す場合は、その理由しだいでは料金がかかる可能性もあります。
また、送料は別途必要になることが多いです。
依頼する際に念のため確認しましょう。
●障害年金の診断書の訂正・書き直しの具体的な方法を解説
次に、医師が診断書の訂正・書き直しに応じてくれた場合の、具体的な訂正方法です。
①訂正する箇所は、二重線で削除し正しい内容を記載する
②訂正印は原則不要、ただし欄外に作成医の印がある診断書は訂正印を押す
③作成年月日は、訂正・書き直しの日に変える必要なし
ただし、あまりに多数の訂正箇所があると、診断書の仕上がりとしては見栄えが悪くなります。
新しく作成し直すか、大規模な訂正にするか、医師とよく相談して下さい。
(診断書には手書き用とPC入力用がありますので、医師がどちらで作成するかにもよります。)
順に、解説していきますね。
①訂正する箇所は、二重線で削除し正しい内容を記載する
診断書を訂正する場合、原則として、誤りの箇所を二重線で削除します。
そのうえで、分かるように正しい内容を手書きします。
PC入力用の診断書でも、訂正箇所がわずかなら、手書きで二重線による訂正を行うことが多いです。
単純な誤り訂正なら、医療事務の担当者が作成医の許可を得てその場で訂正する場合もあります。

②訂正印は原則不要、ただし欄外に作成医の印がある診断書は訂正印を押す
現在、障害年金の提出書類は、診断書も含めて、押印は原則不要です。
診断書には、作成医の氏名・診療科、病院名・所在地の記載欄がありますが、押印は求められません。
ただし、元の診断書に押印がある場合は、訂正箇所にも同じ印を訂正印として押します。
また、欄外に作成医の押印がない診断書の場合でも、実際には、訂正箇所に押印される場合も多いです。
③作成年月日は、訂正・書き直しの日に変える必要なし
診断書(裏面)の欄外に、作成医の氏名などとともに、日付を記載する欄があります。
ここは、この診断書を作成した年月日が記入されています。
診断書を訂正した場合、この日付をどうするのかというと、訂正・書き直しした年月日に変更する必要はなく、そのままで問題ありません。
あくまでも診断書を作成した年月日だからです。
●障害年金の診断書の訂正・書き直し | よくある質問
<よくある質問>
①医師にお願いすれば必ず書き直しの修正をしてもらえる?
必ず修正に応じてもらえるとは限りません。
診断書の作成・訂正は医師の職権ですので、明らかなミスの訂正であれば応じてもらえますが、認識不足や評価の違いに起因する場合は、医師に納得していただかなければ、修正に応じてもらうことは難しいでしょう。
その場合は、効果はあまり期待できないとしても、請求者ご本人が作成できる唯一の書類である「病歴・就労状況等申立書」に必要な内容を補足する方法が考えられます。
②仮に作成医に断られた場合、他の医師に書き直しを依頼できる?
作成された診断書を、作成医以外の他の医師が訂正・書き直しをすることはできません。
ただし、どうしても納得できる診断書を得られない場合、主治医を変えて、転医先で新たに診断書を依頼するという選択肢はあります。
(訂正ではなく、新たな診断書の作成です。)
ただし、どの医師が作成するにせよ、診断書はカルテに基づくものですので、転医して間もない患者の診断書を作成できるとは限らず、断られる場合があります。
また、転医することは請求者ご自身の治療方針にも大きな影響を与えますので、慎重に検討すべきでしょう。
③再請求したが不支給だった場合に、不服申し立てはできる?
障害年金を請求したが不支給だった場合、いつでも、二度目の請求を行えます。
例えば請求者ご自身で1度目はうまくいかなかった場合、社労士に依頼して二度目を行うようなケースです。
この場合も、もし不支給であれば、不服申し立てが可能です。
ただし、最初の請求で提出した書類も、二度目の請求で提出した書類も、全て、日本年金機構に記録が残ります。
新たに提出する診断書の内容(病歴・就労状況等申立書も)が当初から変わるような場合は、その変化に合理性があることを説明できるようにしておきましょう。
●文書(メモ)を事前に作成し、主治医に手渡すことも工夫のひとつ
納得できる診断書を主治医に作成してもらうためには、診察の前に、あらかじめ文書(メモ)を作成しておき、主治医に手渡しましょう。
特に、精神障害などの場合、請求者ご本人では難しい場合もあるでしょう。
そんなときはご家族や支援者がサポートしてあげることが望ましいです。
その内容がカルテに残ります。
こうした、ちょっとした工夫の積み重ねが、障害年金の診断書の質を確保する一歩になります。
これまで解説してきたとおり、診断書の訂正・書き直しは、内容によっては、作成医に応じてもらえない場合もあり得ます。
従って、障害年金は、最初の裁定請求を万全の準備で行うことが、なんといっても大切です。
障害年金の請求を考え始めたら、前もって、診断書を依頼することになる主治医に、その病気による日常生活での具体的な苦労や、就労先で受けている具体的な援助などを、積極的に伝えておくことがとても重要です。
これは、障害年金を専門にしている社労士として、特に強調したいことです。
●まとめ:最初に診断書を依頼すると決めた時から、万全の準備を!
本ブログで、障害年金の請求にとって最重要の書類である「診断書」が、訂正・作り直しが必要になった場合の対処法を解説してきました。
あらかじめ診断書の様式をご自身で確認しておき、どのような情報(記載内容)が医師にとって必要なのか把握しておくことも有効です。
※参考リンク:障害年金の請求手続き等に使用する診断書・関連書類(厚生労働省)
もし、ご自身では難しいと感じたら、専門家である社労士に相談してみることもおススメです。
初回相談は無料のことが多いです。
請求手続きを見通して、アドバイスを受けることができるでしょう。
医師の仕事は「病気の治療」であり、請求人を「患者」として見ています。
特に申告が無い限り、病院外での日常まで把握はしていません。
他方、私たち社労士の仕事は「障害年金の受給権」であり、患者を「請求人」として見ています。
依頼者である請求人のために、「治療」と「年金受給権」という二つの目的をふまえ、障害年金を請求できる「診断書」の形になるよう医師をアシストすることが、私たち社労士の大切な仕事のひとつです。
このブログが、必要な方に必要な支援が届くための一助になれば、とてもうれしいです。




