障害年金の請求代理の仕事をするなかで、毎回たいへん悩ましいのが、診断書です。
なぜなら障害年金用診断書は、傷病や病態によって8種類の様式が指定されます(⇒こちら)。
それぞれ、障害等級の認定に必要な情報を各項番の記載ぶりから読み取れる様式になっているわけです。
この、いわば特別の器に、請求人の障害状態を盛り込むことができる権限と職能を有しているのは、ただ医師(または歯科医師)のみです。
他方、提出された診断書等から、機構側が請求人の障害状態を認定する基準というものが存在します。それが「障害認定基準」です。
例えば、高次脳機能障害であれば「精神の障害」の「症状性を含む器質性精神障害」に分類され、次のような注目すべき記述があります。
・「精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定する」
・「日常生活能力の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める」
・「現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」
…ここで素朴な疑問がわきます。
この「日常生活状況」「日常生活能力」「就労状況」「仕事場で受けている援助の内容」「他の従業員との意思疎通の状況等」などを、機構側は、いかにして把握するのでしょうか?
言い換えれば、機構にこれらを過不足なく伝えるのは誰の仕事か、ということです。
確かに診断書には、これらに該当する記載欄があります。
しかし、医師は月1回数分程度の診察で、患者の日常生活や就労状況を過不足なく把握できるでしょうか。
医師が、家族や勤務先にヒアリングできれば良いのでしょうが、ただでさえ多忙ななか、それは難しいでしょう。
ちなみに、医師も人間ですので、当然ながら様々な考え方をお持ちで、主観や個人差もあります。
・障害年金を請求していない他の患者とのバランスを考えないといけない。
・医師、社労士、相談員など、皆が請求人を助けたい(障害年金を受給できるようにしてあげたい)と思う人々ばかりだったら、障害年金制度は大丈夫か。
・就労継続支援に通い、受け応えもしっかりしていたから、2級にはならない。
などは、私が実際にうかがった経験のあるご意見です。
あるいは、請求者ご本人による申立書で足りるでしょうか。
現場の肌感覚では、やはり請求者がご自身の状況をしっかり伝えられている、伝えられると納得感をもっている方は多くないです。
私の経験でも、ご本人がなかなか表現できない日常生活のご苦労などを言葉にして差し上げたとき、「事実そのもので、どうして分かったのかと驚いた、ぜひこのまま伝えてほしい」とご本人やご家族から本音の言葉で喜んでいただけることが多いです。
依頼者様(請求者)の代理人である社労士は、ご本人の日常生活・就労状況を機構に過不足なく伝えるという役割を負っているように思います。
もちろん、依頼者様一人ひとりケースが違いますので、おのずと出来ることにも限りがあります。
とはいえ出来ることはすべてするのが私のポリシーです。
今後も労力を惜しまず、社労士として、依頼者様を支えるすべての支援者とつながりながら、この仕事に邁進していこうと思います。

