この「初診日」シリーズ最後は、「初診日をめぐる論点いろいろ」です。
✅遺族厚生年金にあって、障害厚生年金にない「長期要件」
公的年金が保険の仕組みであり、国民年金か厚生年金いずれの加入期間中に給付の原因である出来事すなわち保険事故があるかによって、受け取れる年金が決定されること、そして、この保険事故の発生を「初診日」によって判定することは、先に述べました。(⇒こちら)
ですので、例えば、会社員などが過去に厚生年金保険料をどれだけ長期間にわたり納付し続けていても、初診日の時点で退職してしまっていた場合は、厚生年金は受け取れません。
他方で、公的年金には遺族年金もありますが、遺族厚生年金には「長期要件」という制度があるのをご存じでしょうか。
遺族年金の保険事故は「死亡」です。この死亡が厚生年金加入中に発生した場合以外(退職後など)でも、例えば、保険料納付済みの期間と免除期間を合わせて25年以上あるなど要件を満たせば、遺族に厚生年金が支給されます。
これは、保険の原則の側からみれば、例外といえます。
しかし、公的年金は社会保障制度の柱です。「社会のセーフティネット」としての「目的」を実現するため、保険の仕組みを「手段」として用いているのですから、やはり目的に照らせば一定の必然性があるのではないでしょうか。
なぜなら、死亡という保険事故は65歳や70歳という年齢で線引きできず、年金の目的は本人ではなく残された遺族の今後の生活の安定だからです。
同様に、障害という保険事故も、やはり年齢で線引きできません。そして目的は、本人や支える家族の生活を長期間にわたり安定させること、ですよね。
私も、障害年金のお仕事をする中で、依頼者さんに2ヶ月おきに振り込まれる障害年金がいかにご本人や家族の生活に不可欠か、日々実感しています。
障害厚生年金の「長期要件」、実現されるといいと思っています。
✅40年間にわたり延長されている「直近1年要件」
初診日が保険料納付要件を確認するための重要な日付であることは、先に述べました。具体的には、初診月の前々月までの加入期間の保険料について未納がどれくらいかあるかを、初診日の前日において判断することになります。(⇒こちら)
原則として、加入期間全体の3分の1以上で保険料未納があると要件を満たせません。
ただし、特例措置として、初診月の前々月までの直近1年間に保険料未納期間が全くなければ、納付要件を満たすものとして扱ってもらえます。これを「直近1年要件」といったりします。
現在は「令和18年4月1日以前に初診日がある」場合の「特例措置」とされています。
もともと、旧法から引き継いだ規定で、基礎年金が導入された1985年から10年間の措置でしたが、その後、10年間ずつ四度(合計40年間!)にわたり延長され、現在に至りました。
だから、もう役割は終えたのではないか、延長せず原則どおりで良いではないか、という論調もあるようです。
きっと、40年間にわたり延長されてきた背景には、長い人生の中で保険料免除申請などを気を付けていても、初診日のタイミングによって要件を満たせなくなってしまうケースが実際にあります。
そうした障害者を救済するという目的があったのだと推測します。
つまり、上記の遺族厚生年金の「長期用件」と同じく、「社会のセーフティネット」としての「目的」を実現するため、「手段」として「保険の仕組み」を利用していることに根底でつながっている論点なのではないでしょうか。
私なぞは、逆にもう永久化したらいいのに?などと思ってしまいますが…。
(その他、「初診日と障害認定日の関係」など予定していますが、こちらは「障害認定日」シリーズで触れます。)

