前回までに、障害年金という制度にとって「初診日」がいかに重要な日付であるか、おわかりいただけたと思います。
では、この「初診日」の例外や注意点について挙げてみます。
✅二十歳前の障害
20歳以上であれば国民年金に加入していますが、それ以前に障害状態となった人は年金をもらえないのでしょうか?
ご存じのとおり、障害基礎年金の「二十歳前傷病」という種類を請求できますよね。
代表例は、生まれつき知的障害をお持ちの方です。
親元で生活し特に受診や通院もしていないような方も多いですが、出生日=初診日とみなす取り扱いになっています。
この場合、生まれた当時、実際に診断や受診がなくても問題ありません。
他方、同じ「二十歳前」でも、交通事故で肢体不自由となったケースや、知的障害がなく発達障害を発症したケースなどは別です。
実際の初診日があるので、その日が初診日になるわけですね。
ちなみに、上記はいずれも保険料を納めていませんので、初診日の前日における納付要件は問われません。
これを「無拠出の年金」と呼び、福祉的な給付として、例外的に所得制限があります。(⇒詳しくはこちら)
✅変形性股関節症
これに関連する注意点として、「変形性股関節症」の初診日があります。
例えば、40代半ばで痛みを感じ始めたが、日常生活や仕事はどうにか我慢できたので様子をみていたところ、50代になり耐え切れなくなり受診し、変形性股関節症と診断されたようなケースです。
変形性股関節症の場合、重くなると痛みも大きく日常生活や仕事に支障をきたすので、人工関節を挿入置換する手術が行われます。
この手術が行われた場合、原則的には、障害厚生年金3級に該当する取り扱いです。(3級なので、厚生年金に加入していないと受給できません。ただし、予後が悪い場合は2級以上となることもあります。)
この場合の初診日は、普通に考えれば、50代の初診日が採用されそうですよね。
しかし、幼少期に股関節に「○○形成不全」と診断されていたケース、交通事故や体育で股関節をケガしていたケース、それ以外にも、出生時や胎児期の状態が関係するケースなどでは、初診日が本人も知らなかった出生時など(=二十歳前)に遡ってしまうことがあるのです。
そうなると、「二十歳前傷病」の障害基礎年金ですので、必然的に、人工関節では受給権を得られない可能性が高いのです。
ですので、自身の病歴をしっかり把握し、長期にわたり症状なく社会生活を送れていたことを審査側に伝え、50代での初診日をもとに認定を求めることがポイントになります。(いわゆる「社会的治癒」の援用ですが、こちらも重要ですので、別の機会に詳しく紹介します)
✅病名が違う
病名が、今の主治医の診断と、最初の医師の診断が異なる場合はどうでしょうか?
これは精神の障害などでは普通にあります。現在は「うつ病」、初診時は「パニック障害」というようなケースですね。
障害年金は、障害の状態(程度や重さ)によって認定されるのであって、傷病名によってではありません。
ですので、初診日と現在で病名が違っている場合はしばしばありますが、認定を求める障害の原因として「相当因果関係あり」と判断できさえすれば、それが初診日として取り扱われます。
必ずしも確定診断された日である必要はなく、もっと言えば、誤診であっても初診日となり得ます。
✅日付が違う
さらには、日付が、今の主治医の認識と、最初の医師の認識が異なる場合はどうでしょうか?
「えっ、そんなことあるの?」と思われるかもしれませんが、実際にありました。どちらの医療機関でも「診療録で確認」とのことでしたので、いわば「二つの初診日」が出てきたケースですね。
これも、考え方は病名と同じ。
認定を求める障害との相当因果関係が判断できるのであれば、どちらを選んでも間違いではないと考えます。(ケースバイケースですが、今の主治医の認識に合わせる、あるいは早いほうの日付を選ぶ、など)
もちろん、いずれの初診日の前日においても納付要件に影響がないことは確認しなければなりません。
(次回は、このシリーズ最後、「初診日をめぐる論点いろいろ」です)

