◆親御さんからの質問
障害年金について相談を受けていると、「うちの子、知的障害があるんだけど、子ども名義の預貯金があると障害基礎年金をもらえないんでしょ? 貯金を移しとくべきですか?」と質問されることがあります。
障害のある、なしにかかわらず、親としては子の名義で預貯金をコツコツ貯めている方も多いですよね。
心配されるのも、もっともです。
先に結論を申しますと…
生まれつき知的障害をお持ちの方が二十歳の誕生日を迎えて受給する「二十歳前傷病による障害基礎年金」には、確かに「所得制限」はありますが、制限対象は、保有する資産額ではなく、受給者(子)本人の前年度所得です。
かつ、その基準額は比較的高めで、扶養者(親)や配偶者(本人の夫・妻)の所得は対象外です。
ですので、子ども名義の預貯金があっても、それを理由に障害基礎年金がもらえないことはありません。
まずはひと安心、ですね!
せっかくですので、上記の「所得制限」についても正しく理解しておきましょう。
◆なぜ「所得制限」があるのか?
原則として、障害年金(国民年金、厚生年金いずれも)に所得制限はありません。
一般就労でそれなりの所得も得ながら、同時に障害年金を受給されている方も珍しくはありません。
ご質問の「所得制限」。
これは、あくまでも「二十歳前傷病による障害基礎年金」だけの例外なんです。
なぜ例外があるのか?
それは、障害年金が、初診日の前日において国民年金または厚生年金に加入し保険料を一定以上納めていたことを支給要件の一つとする「保険の仕組み」であることに由来します。
生まれつきの知的障害を原因とする場合、二十歳前の傷病ですので当然ですが、国民年金保険料を納めていません。
ですが、国民年金法(第1条)には「日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする」という条文がおかれています。
この「一丁目一番地」があるから、保険料を納めていなくても、障害状態に該当しさえすれば支給対象にしているのですね。
その意味で、「二十歳前傷病」を「福祉的年金」と呼ぶこともあります。
これが、受給者本人について一定の所得制限が設けられた理由です。
◆どの程度の「所得制限」か
具体的には、どの程度でしょうか?
大きくは半額または全額停止の2段階です。
受給者本人について、前年の所得額が3,761,000円を超えると年金額の半額が、さらに4,794,000円を超えると年金の全額が、停止されます。
以前はもう少し低かったのですが、令和7年10月1日からこの所得額が施行されました。(→詳しくはこちら)
同月以後に発した二十歳前傷病による障害基礎年金、障害年金生活者支援給付金から適用されていますよ。
なお、本人に扶養親族がいる場合、扶養親族1人につき所得制限額の上限がさらに加算されます。
「二十歳前傷病」の場合、毎年7月、本人の前年度所得を報告しています。マイナンバーにより自治体から連携される場合も多いようです。それに基づいて、支給停止される期間は、10月から翌年9月までの1年間です。
◆「前年度の所得額」とは?
ちなみに、この場合の「前年度の所得額」とは、いわゆる「年収」(総額)ではありません。
給与所得控除後の金額ですので、ざっくり「年収」の7割ほどではないでしょうか。
そうすると、半額支給停止にかかるケースというのは、年収500万円超ということになります。
もちろん、給与所得だけが対象ではないのですが、本人の不動産収入や副業収入など、給与所得以外の所得を持つ方もあまりないでしょう。
例えば、特別支援学校を卒業してすぐに一般就労し、フルタイムでばりばり働き始め、残業代やボーナスをそれなりに稼ぐことができれば年収500万円も絶対ないとは言えませんが、すぐにこの年収レベルに達するケースは少なそうです。
ですので、結論としては、あまり所得制限を心配しなくてもよいのではないでしょうか。
それよりも、本人がいちばん自分らしく生活できる働き方を実現していくことが大切ですから…
◆ウチの子、障害年金もらえるの?!
正直いって、親御さんにとっては、制度について詳しく知りたいのではなく、「ウチの子は障害年金もらえるの?!」という思いですよね。
そんなときは、社会保険労務士に相談してみるのもいいのではないでしょうか?
ご相談は無料です。お気軽にどうぞ。

