業務中にケガをした、または不幸にして亡くなってしまった、という労災保険給付の申請について相談をお受けしています。
先日も、被災した労働者側の事務代理者として、所轄の労働基準監督署に申請手続をしてきました。
最初に、基本的かつ大事なことを申し上げます。
労災を認定するのは、あくまでも労働基準監督署だということです。
ですので、事業主が「労災じゃない」と言っても認定されることはありますし、その逆(事業主が「労災だ」と言っても認定されないこと)もあります。
と申しますのは、各申請書に、事業主証明欄がありますが、ときどき、「労災じゃない」と言って、証明を渋る社長さんがいらっしゃいます。
おそらく、いちばん社長さんが気にするのは、申請書類の「災害の原因及び発生状況」欄でしょう。
それと、「保険料があがる」という心配でしょうか。
◆まず、「災害の原因及び発生状況」について。
具体的には
(あ)どのような場所で
(い)どのような作業をしているときに
(う)どのような物又は環境に
(え)どのような不安全な又は有害な状態があって
(お)どのような災害が発生したかを簡明に記載すること
もちろん、事実を根拠としつつも、原因や発生状況には価値評価が含まれる以上、事業主側と労働者側とで一致しない可能性はあります。
しかし、一致しない限り事業主証明をしないという姿勢では、労働者側からは永遠に申請できないことになりかねません。
それでは理不尽なので、証明して頂けない旨、労働者側が一枚つけて提出すれば、ちゃんと申請が受理されます。
(その後、労基署から会社に調査します。)
他方、申請に「労働者証明」なるものは不要な形式ですので、事業主側がセルフで完結できることに、労働者側は注意が必要です。
「災害の原因及び発生状況」欄に記載された内容は重要ですので、被災直後でいろいろたいへんな状況ですが、労働者側も出来る限り内容は確認し、必要に応じて、労働者側としての詳細な申立書を提出することも検討しましょう。
◆次に、「保険料が上がる」について。
いわゆる「メリット制」のことだと思われます。
※労災保険の保険料は、事業主が負担します(労働者の負担はない)。
具体的には
A:100人以上の労働者を使用した事業であること。
B:20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が0.4以上であること。
いずれかに当てはまると、実際の労災保険給付の額に応じて、後日、保険料が上乗せ算定される仕組みです。
ちなみに、災害度係数は次のように算定します。
災害度係数 = 労働者数 × (業種ごとの労災保険率-非業務災害率) ≧ 0.4
このA、B、災害度係数の要件は、ざっくり言うと、それなりの規模(労働者数)の企業か、災害の危険度がそれなりに高い業種を対象にしましょうという内容です。
ということは、小さい企業や災害危険度が低い業種は、労災認定されたとしても、必ずしも保険料が上がるとは限らないということです。
労災と認定されてしまうと必ず保険料負担が上乗せされると勘違いされている場合があります。
繰り返しますが…
労災を認定するのは、あくまでも労働基準監督署。
被災された労働者のために、そして職場の従業員の皆さんのためにも、社長さんは、手続きにご協力いただけるとよいと思います。
職場の従業員も、社長さんの対応については見ていますよ。
次に、自分が同じ状況になったとき、会社がどのような対応をしてくれるか、よく分かりますから…。

