いよいよ第3問の解答です。
(クイズ内容は、こちら)
こちらも、よくありそうなシチュエーションです。
例えば、幼なじみの経営者の下で仕事をする場合など、労働契約があいまいになりやすいケースではないでしょうか。
(労働契約は、書面が望ましいですが、口頭でも成立します。)
私も、未払残業代請求は、数えきれないほど経験しました。
では、解答を順番に考えていきましょう。
まず大前提として、クイズ第2問で紹介しましたが、労基法上の労働時間の原則は「1週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならない」(第32条)です。
ただし、原則には例外がつきもの。時間外労働が認められる例外があるわけですね。
ここでは、その例外要件を満たしているものとして考えます。
時間外労働を行わせた場合には、法第37条で定められている算定方法に従って、割増賃金を支払わなければなりません。
適用される割増率や算定基礎額なども規定されています。
(詳細は条文をご確認ください。)
そのうえで、社長の言い分には、論点が二つあります。
(1)固定残業代にあたるか
(2)管理監督者にあたるか
1つ目について。
いわゆる「固定残業代」とは、所定の賃金に定額の残業代(時間外労働手当)が含まれている賃金制度です。これ自体が違法というわけではなく、実際の時間外労働に見合って労基法(第37条)に定められた割増賃金額がキチンと支払われていれば、適法と判断されます。
しかし、どのように確認するのでしょうか?
この点について、重要な判例があります。
「労基法37条は、時間外労働を抑制し、労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨」
「同条は、同条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまる」
「割増賃金ををあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分とを判別することができることが必要」
<最2小判平成29年7月7月 康心会事件>
つまり、労基法は「最低基準」(第1条2項)ですので、上記第37条に定められた算定方法による割増賃金を下回っていない(未払額が生じていない)と確認できるためには、実際に支払われた基本給のうち、どの部分が割増賃金にあたるのか判別できなければいけないわけですね。
これは「判別可能性」と「対価性」といわれ、同じ趣旨の判例として<高知県観光事件>があります。
特に「判別可能性」がない場合、基本給全額が割増賃金の算定の基礎額となると理解されます。
さて、クイズのケースでは「初めて聞く話」とのこと。
労働契約があいまいな場合、労使双方の主張がかみ合わないことは、よくあります。労働契約書や就業規則にあらかじめ定めがあれば、話は変わってくる可能性がありますが、単に「基本給に含まれている」と社長が主張するだけでは認められないことを念頭に、労使双方が認識を一致させておくことが紛争を未然に防ぐカギといえるでしょう。
対立してからではなく、最初のスタート時が肝心ですよ。
…2つ目の論点は、次回にしますね。
当事務所では、労働問題に対処するにあたり、労働組合の経験値を活かしつつ、必要であれば、特定社労士として個別労働紛争解決手続の代理人にもなれますが、それにこだわらず、あらゆる方法を検討します。労働者支援の関係機関とも連携していますので、それらをご紹介することも可能です。
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