障害年金を請求した方、あるいは請求しようとする方が、どうしても気になるのが、「もし認定されなかったら…」「低い等級だったら…」という不安ではないでしょうか。
障害年金は請求してから結果がわかるまでに3ヶ月ほどかかるだけに、不安を感じる期間も長いんです。
待ちに待った結果が、自分が思っていたような内容ではなかったとき、どうしますか?
そんな場合の対応策の一つが「不服申し立て」です。
本ブログでは、この「不服申し立て」について解説します!

尾崎 彰信(特定社会保険労務士)
私は、社労士として障害年金の請求代理を中心に、必要な方に必要な支援を届けるために取り組んでいます。
『障害ねんきんナビ®』パートナー社労士として北陸3県を担当しています。
※社労士(社会保険労務士)は、障害年金請求手続を代理することが許される国家資格です。

障害年金の不服申し立て 請求先はどこか
障害年金の請求・不支給などの決定は、国による行政処分のひとつ。
その処分に「異議あり!」と不服を申し立てるのが、この仕組みです。
二審制で、まずは審査請求、それでも納得できなければ再審査請求に進みます。
ちなみに、再審査請求でも解決しない場合は、行政訴訟(裁判)に移行します。
この不服申し立ては、あくまでも行政の制度ですので、必ずしも客観性が担保されているとはいえません。
しかし、裁判に比べて簡便に手続きできること、無料であることはメリットではないでしょうか。
請求先は、問題となった処分をした行政庁の機関です。
具体的には、障害年金では、審査請求は地方厚生局の社会保険審査官という職員、再審査請求は厚生労働省本省の社会保険審査会という第三者機関です。
| 審査請求 | 地方厚生局※ 社会保険審査官 ※石川県であれば、東海北陸厚生局(名古屋市中区三の丸2-2-1名古屋合同庁舎第1号館6階) |
| 再審査請求 | 厚生労働省 社会保険審査会(東京都港区西新橋一丁目1番1号 日比谷フォートタワー8階) |
障害年金の審査請求(1審) で認められる確率
不服が認められ、原処分が変更されることを「容認」といいます。
また、請求者が不服を取り下げた「取下げ」の中にも、国が自ら処分を変更したケースが一定数含まれています。
つまり、処分変更により不服の原因が解消し、決定を待つことなく請求者の目的を達した、いわば「実質的容認」です。
これらを合わせた件数が、実態としての「容認」です。
容認率が、不服申し立てが認められる確率の目安になります。
まず、審査請求の段階の容認率については、公開された統計がありません。
ただし、障害年金制度を研究する弁護士らの調査によると、近年の容認率は3%程度とのこと。
かなり低いですね。
障害年金の再審査請求(2審)で認められる確率
では、再審査請求の段階はどうでしょうか。
こちらは、厚生労働省が公開している「社会保険審査会 年度別(再)審査請求 受付・処理状況の推移」から読み取れます。
まず、社会保険の不服申し立てのうち、実に約7割を障害年金が占めています。
老齢・遺族を併せても4%程度にしかならない中で、いかに障害年金に対する不服が多いかが分かりますね。
そして、障害年金について見ると、近年の「容認率」は13%程度で推移してきています。
| 処分変更/容認 | 裁決 | 容認率 | |
| 令和4年度 | 79/73 | 1,107 | 13.7% |
| 令和5年度 | 68/32 | 719 | 13.9% |
| 令和6年度 | 56/53 | 1,106 | 9.9% |
※参考リンク:「社会保険審査会 年度別(再)審査請求 受付・処理状況の推移」、「社会保険審査会 制度別受付・裁決状況」
再審査請求の容認率も決して高くはないのですが、審査請求(1審)と比べると、再審査請求(2審)の容認率のほうが高いのが特徴です。
つまり、もし不服申し立てをすると決めたなら、審査段階で諦めるべきではありません。
再審査請求まで争うことがセオリーです。
障害年金の不服申し立て 手続きの流れ
では、障害年金の不服申し立ての手続きの流れを、具体的に解説していきます。
◆請求期限を確認しておく
障害年金は、支給決定された方には年金証書が、不支給決定された方には通知書が、封書で手元に送られます。
これらの処分を知った日から、審査請求は3ヶ月以内、再審査請求は2ヶ月以内が請求期限と決められています。
この請求期限を勘違いすると、請求者としての権利を失ってしまいます。
しっかり確認しておきましょう。
◆処分理由を把握するため情報収集しよう
「納得できない」からといって、ただ不満を申し立てしたのでは、認められません。
「お金がない」などと生活苦を訴えてもダメです。
国の処分のどこに問題(違法性あるいは不当性)があるかを、資料を駆使し、事実に即して論理的に立証するのです。
そのためには、何はともあれ、処分理由の把握が欠かせません。
ところが、決定通知に処分理由があまり詳しく書かれていません。
特に下位等級であれ支給認定された場合、送られてくるのは年金証書です。
大切なことは、国による認定プロセス(理由や根拠)につながる情報を、少しでも詳しく収集することです。
◆保有個人情報開示請求を活用しよう
そのために、「保有個人情報開示請求」の活用を検討しましょう。
請求した障害年金についての国の認定経過を知るために、機構内部で作成された一連の資料を開示請求する手続きです。
例えば、「認定調書」「事前確認票」などの内部資料がそれにあたります。
詳細は別記事にゆずりますが、厚生労働省の年金局に対して請求します。
請求して資料を入手できるまでに約1ヶ月~1ヶ月半かかります。審査請求期限を考えると、処分決定後、スピーディに請求をかける必要があります。
もちろん、それ以外にも、カルテ開示による医療情報、主治医意見書など、ケース・バイ・ケースで同時並行で準備します。
◆「請求の趣旨および理由」を作成する
審査請求書(様式)は、厚生労働省HPからダウンロードできます。
請求人、代理人、原処分者(障害年金の場合は厚生労働大臣)、審査請求の趣旨および理由、添付資料、委任状がセットになった様式です。
ただし、請求人の主張を書く「趣旨および理由」の欄は非常に小さいので、通常、別紙を添付します。
※参考リンク:東海北陸厚生局社会保険審査官への審査請求書
「趣旨」に請求内容を、「理由」にその根拠を、新たに入手した情報などを盛り込み、わかりやすく論理だてて書いていきます。
国の処分の不当性をわかりやすく論理的に説得するイメージで作成します。
この「趣旨および理由」が、不服申し立ての核心といっていいでしょう。
社会保険労務士が代理する場合は、腕の見せどころですね。
◆必ず期限内に提出する!
「請求の趣旨および理由」の推敲や資料取集に集中するあまり、うっかり期限を過ぎてしまった、なんてことは絶対に避けなければなりません。
もし、診断書やカルテなどの資料がどうしても間に合わないような場合は、審査請求書の趣旨だけでも提出し、理由と資料は追って提出する旨を記載しておくことも認められています。
入手できた段階で速やかに追加提出すればよいので、確実に期限内に提出しましょう。
経験者は語る―等級目安を間違えていたケース
筆者の経験でも、こんなことがありました。
精神の障害で裁定請求した方で、診断書は「等級判定ガイドライン」に照らして明らかに2級相当だったにもかかわらず、認定結果は3級だったケースです。
「おかしい」と直感し、機構保有個人情報開示請求により認定プロセスを検証しました。
すると、驚くべきことに、事前確認票の等級目安が「2級又は3級」と間違えて記されていたのです。
認定医の総合評価の前提となる重要書類に、あってはならないミスでした。
あらためて、「人間のすることに絶対はない」それは障害年金の認定についても同じなのだと肝に銘じたのです。
障害年金の不服申し立て よくある質問
Q 不服申し立ては審査より再審査のほうが容認率が高いのはなぜ?
A 審査請求を受け付ける社会保険審査官は、厚生労働省の職員です。
国に任命された公務員が1人で審査しますので、国の処分を覆すような主体性が弱いのは想像に難くないですよね。
他方、再審査を受け付ける社会保険審査会は、元裁判官、医師、社労士などで構成される第三者機関です。
事案ごとに3人合議制で公開審査により裁決しますので、一定の客観性・公平性が担保されているといえるのではないでしょうか。
裁決を待たずに処分変更するケースも、事実上、社会保険審査会が国に働きかけて認めさせていることもあるようです。
よって、不服申し立てをする場合は再審査請求まで争う構えで臨みましょう。
Q 不服申し立てで新しい診断書を出せるの?
A 基本的に「後出しジャンケン」は認められない、と心得ましょう。
もちろん、医師が医学的な根拠を示した場合や、カルテに根拠がある場合など、診断書の補正が認められた事例がないわけではありませんが、提出しても審査対象と認められない可能性が高いです。
何よりも、最初の裁定請求の段階で、障害状態をしっかり反映した診断書を作成してもらうことが大切です。
Q 不服申し立ての結果はいつ分かるの?
A 障害年金というのは、とにかく時間がかかる制度です。
まず、最初の裁定請求から結果が通知されるまでに3ヶ月程度。
審査請求から決定書が通知されるのに3~4ヶ月程度。
再審査請求から公開審理を経て裁決されるまでに6~12ヶ月程度。
もちろん、資料収集や文書作成などの準備期間がそれぞれ必要ですので、トータルで、早くて1年、長ければ2年かかると覚悟しておきましょう。
Q 不服申し立てできないケースはあるの?
A 処分に対する不服ですので、処分がなければ、不服申し立てができないことに注意が必要です。
障害年金の請求上、これは重要なポイントです。
例えば、障害認定日に2級相当、請求日に1級相当を想定して請求したようなケースを考えて下さい。
想定外に、請求日も2級判定だった場合、不服申し立てができるでしょうか?
これは、障害認定日で2級が認定され、請求日はそのまま何も処分が行われなかった取扱いになるので、不服申し立てができません。
ちなみに、こうした事態の対処は、同時に額改定請求を提出しておくことで、不服申し立てが認められます。
Q 不服申し立てに費用はかかる?
A 不服申し立ては、あくまでも行政の仕組みですので、申し立て自体には、費用がかかりません。
この点は、裁判(行政訴訟)との大きな違いです。
ただし、個人情報開示やカルテ開示など資料収集にかかる費用、再審査請求の公開審理に出席する場合の旅費交通費、社会保険労務士など代理人を依頼した場合の費用など、一定の金額は必要になる場合があるでしょう。
障害年金の不服申し立て 自分でするか、社労士に頼むか
こうした障害年金の不服申し立てを実際にするとき、結局のところ、自力でやるのか、社会保険労務士に代理を依頼するのか、迷うところではないでしょうか。
当然、代理人を依頼すると費用がかかりますので、少しでも負担を軽くしたいのは誰しも同じです。
しかし、裁定請求でもうまくいかなかったことを、さらに「狭き門」である審査請求・再審査請求に進むのですから、ここは専門家に任せて万全を期すのがセオリーでしょう。
私たち社会保険労務士は、そんな時こそ力になれると信じています。
社労士の中には、最初の裁定請求のみ引き受けている事務所もあるようですので、最初の裁定請求の段階から、万一の審査・再審査まで責任もって取り組める社労士への依頼がお勧めです。
途中の不服申し立てから代理人を変えることは、さらに難易度がアップする一因になります。
まとめ―不当な認定結果に対して泣き寝入りはやめよう
障害年金は、障害をお持ちの方にとって、生活を守るなくてはならない所得保障です。
しかし、障害年金の審査は人間のすることですから、事務ミスや評価の間違い、さらには恣意的な判定なども、絶対にないとはいえません。
それだけに、請求者側(請求者ご本人、代理人の社会保険労務士)にとって納得できない、あるいは明らかに不当な認定結果に対しては、国民の権利としての不服申し立てを行使すべきではないでしょうか。
もし泣き寝入りすれば、それは制度全体の悪しき前例として許されてしまうのですから…。
当事務所では、必要な方に必要な障害年金をお届けするため、最初の裁定請求から再審査の最後まで一貫して取り組んでいます。
報酬にも加算はありません。
障害年金の請求をお考えの方、もしくは請求したけれど納得できる結果を得られなかった方は、ぜひご相談ください。


